固形墨を使うメリット
メリット①墨液より固形墨は保存期間が比較的長いことです。
墨液は開封後 早めに使う必要がある。
墨液は原料の煤と一緒に膠が入っています。
膠は墨を紙に漂着させるために入っているものなんですが、夏場などの気温が高い時は
液体の中に膠が入っている墨液は容器の中で腐ってしまうことも多いです。
腐ってしまうとどのようなことが起きるのか?
作品を額に張り込んだり、掛軸に仕立てる時など、通常シワを伸ばす必要があります。
その時に霧吹きのようなもので水を使用して伸ばすんですが、その水の影響で墨が滲んでしまいます。もちろん固形墨も少しずつ膠が減っていくんですが液体ではないので長期間保存できると言うところが良いところです。
メリット②墨色が楽しめることです。
固形墨は硯で墨をするので、硯の鋒鋩(ほうぼう)凸凹により粒子の細かさが変わります。
粒子が細かく濃度が高いと重圧さ、逆に淡墨のように薄く粒子が粗いと立体感が表現できるのも固形墨ならではの楽しみの一つです。
その他にも固形墨は墨液より古く前から存在しているので、古墨と言う古い墨があります。
それは例えるならワインの様な歴史の深みを感じられるところ良い部分の一つです。
古墨(こぼく)とは、文房四宝における墨の中で、製造されてから長い年月を経ているものをいい、品質の良い墨とされている。通常、唐墨は清時代までに、和墨江戸時代までにつくられたものを古墨と称す。ただし、今ではほとんど入手不可能であり、100年以上前の墨は古渡りものにたよる以外ない。
メリット③心を落ち着かせることができる
心と抽象的な表現をしたんですが、それは墨を硯で磨ることにより日常の生活から
集中して自分の世界に入るための手段でもあるからです。
墨液は確かに便利で、容器に墨を入れるだけで簡単に字を書くことができますが、
ただそれだと作業に近く自分と向き合う時間が確保できず、上手く字を書くというところだけに囚われてしまうんじゃないかと思うからです。
本来アートにしろ書道にしろ上手さなどには物差しがなく、正解がないから面白いものだと思うんですが、それが誰かよりも上手に書くと言う評価の世界になった瞬間に早さを求め、その早さを求めた結果書くと言う行為だけが分離してしまい、本来あるべき楽しさや
心地よさなどが抜け落ちてしまい1番を目指すことが目的となってしまうのだと思うんですが、個人的には書道や道のつくものは前後が大切だと思っています。
それは思いやりであったり姿勢であったりと、書く前の前後にある挨拶や人、物、に向き合う姿勢、言葉に始まり道具を大切にする想いやりの気持ちや行動、意識すればキリがないぐらい学びがあり、発見できることが多いのが書道の楽しさの本質だと思うので、話はそれましたが皆さん時間のある時は是非一度墨をを磨って心を落ち着かせてみてはいかがでしょうか。
墨液を使うメリット
メリット①書くための時間が確保できる
固形墨と違い墨を磨らずに容器に墨液を入れるだけなので、沢山の字を書けることや大きな作品が書けるようになったことが墨液の最大のプラスな点だと思います。
メリット②手軽に始めることができる
目的の幅が広がりいろんな方が気軽に書道を楽しめることができる
何かを始める時はいかにして簡単にはじめられるかがポイントだと思うので
墨液の発明により書道が一般的に親しみやすくなったのは間違いないと思います。
メリット③書道パフォーマンスが可能になった事
これは個人的な見解になるんですが、S N SやY O U T U B Eなどの世界の人達と繋がれる媒体ができたことにより、書道の表現のあり方が変化しつつあると思っています。
これまではクローズドの空間での発信が当たり前だったんですが、人口の減少とテクノロジーの進化によりパフォーマンができることが書道を表現するためのデフォルトになり、その表現は墨液だからこそできる。そういった面で今後は作品は固形墨でじっくりとパフォーマンスは墨液でダイナミックにと棲み分けがされるかもしれないなと思っています。
初めての方への固形墨の選び方
固形墨は原料と墨の大きさにより価格帯が変わります。
これから書道を始められる方はお手頃な1000円前後で大きさが1丁型の墨が良いと思います。理由はと言いますと最初は教室などに通われたりすると思うんですが教室では墨液を使うことが多いのでご自宅用に最初は墨をする習慣を身につけることが目的になるので1000円前後のもので大丈夫です。慣れてきたらもう少し高めの原料が油煙墨などを購入し書き比べてみたら良いと思います。墨の大きさなんですがそれは硯の磨れる面積によって決まるので、書道セットや最初に購入する硯が大体皆様、四五平や五三寸が多いので1丁型が良いかと思います。
初めての方への墨液の選び方
墨液は書道セットにも付いているのであまり自分で選ぶ事がないかもしれませんが
それでも自分で選びたいと言う方へ
まず最初に墨液は漢字用と仮名用があるんですが、今回は原料に入っている(膠と合成糊剤)の違いについてお話ししたいと思います。冒頭でも少しお話しさせていただいた膠や合成樹脂は何のために必要なのかなんですが、それは紙に墨を漂着させるために必要な要素だからです。この要素が上手く成り立たないと書いた作品の墨が不思議に滲んでしまい場合によっては汚らしく見えてしますからです。
膠と合成糊剤の違い
合成糊剤は戦後10年近く経過し世の中も少しずつ収まり、書道を志す人も増え始め学校教育にも書写が取り入れられるようになり、この時から課題でもあった乾きの遅さを解決すべき開発されたのが合成糊剤を使用した墨液になります。
合成糊剤入りの墨液は乾きも早く、表具の際滲みが発生する可能性が低く、墨液自体の保管期間が5年ほど保存できるなど扱いやすいところが特徴です。
逆に膠を使用した墨液は
墨本来の自然で温かみのある墨色を得る事ができ、同じ膠成分を原料とする固形墨と混ぜてよりオリジナルな墨色を生み出すことができるのが特徴です。
それを踏まえたうえでこれから書道をされる方へのおすすめする墨液は
合成糊剤(合成樹脂)を使用した墨液になります。
理由は単純に取り扱いが便利で最初は沢山書く事がも目的だからです。
この先展覧会に出す作品を制作したり、道具に少しずつこだわりを持つようになったら膠性の墨液を使って見たら良いと思います。合成糊剤仕様の墨液は夏でも腐らないので夏場も沢山書いてくださいね!それではGood your Wrife!
Wrife=ライフ とは? life(生活)とwrite(書く)を掛け合わせた造語になります。
書き初めは難しくネガティブな気持ちが生まれるかもしれないけど、続けることで精神的なスペースが内側に生まれ、受動的な思いは変化し普段の生活や行動がポジティブに切り替わるきっかけを作る。全人類が幸せで平和な世界になりますように Good your Wrife